Phanpy

落書き帳

【感想】君の膵臓をたべたい

を見てきた。原作は未読で、実写版映画の方も見ていなかったので完全初見。

以下ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前述した通り自分は実写版を見ていなかったのだが、アニメ版の方を先に(後に実写版を見ることはないと思うが)見てよかったと思っている。この作品は非常に劇的で非現実的であり、そういったものを実写にすると浅くなりがちだからだ。登場人物のほとんどが高校生で、それを有名俳優・女優が制服コスプレをして演技していても、原作のフィクション性に由来する感動を伝えきることは不可能だと考えている。

 

さて、非現実的であると書いたが、どこが非現実的なのかはっきりさせる必要があるだろう。まず、この物語の主人公は今時の言葉で言えば「陰キャ」である。その陰キャ主人公が偶然病院に行くような事態になり、偶然ヒロイン(クラスでトップレベルに可愛い)の忘れた『共病文庫』を見つけ、偶然それを探していたヒロインとご対面するわけだ。仮にそのような絶対零度を3連続で当てるよりも難しそうな偶然に遭遇したとして、陰キャ男に他の誰にも言っていない秘密を明かし、急に仲良くなるような事態になるわけがない。おおよそ中を見たことに激怒されながらさっさと取り返されるのが現実だろう。このような奇跡を連発することをこの世では「主人公補正」というのだ。陰キャが主人公補正を持って生まれてくるのは漫画やラノベの世界の話。陰キャの俺は知ってるぞ。だからこそ「アニメ」であることが強みなんだが。まあヒロインに言わせると全部偶然じゃなくて「選択」した結果らしいが。ちなみに「選択」が全て「洗濯」に脳内変換されてたから見てる途中に吹き出しそうになった。

 

で、なんだかんだで図書館デート、カフェデート、スイパラデートその他数多のデートをして、なぜか知らんが唐突に2人きりで旅行に行って未成年飲酒したりするわけだが(そんなこと起こるわけねーじゃん)、その旅行を通して主人公に明確な変化が生まれる。普段から他人に興味なさそうな面をして、ヒロインにも塩対応だったのに、なんかちょっと優しくなってる。絆されてやがる。まあわかるよ、可愛い子とそれなりにずっと2人遊んでたらそりゃ気になっちゃうし優しくもなるわな。でもここでヒロインが大病抱えてるってことが2人の関係性を少しだけ歪めてしまう。どちらも「恋人になってはいけない」と思っている。見てる側からしたらどちらの想いも明らかだけれど、でもくっついてはいけない足枷がもどかしく、辛く、でもその気持ちは理解できてしまう。それでお家デートして襲いかかって泣かれてクソみたいな元彼やっつけて、ヒロインが入院して明らかによくない感じの描写が入って花火見て……と色々あった後、ヒロインがなんとびっくり通り魔に襲われて死ぬ。流石に「えっ」ってなるけど、2人でいっぱい楽しいことして最後は病気で死んじゃう「ハッピーエンド」ではなく、もしかしたら死ななかったかもしれない、もしくは極論死んでたのは主人公の方だったかもしれない、唐突な「バッドエンド」は劇的であり、話の締めとしては強く締められたのではないかと思う。病気が原因で最期を迎えていたら、それは主人公の成長に繋がらなかったからだ。主人公、陰キャだったけど根っこはまだいい奴だったし更生可能なレベルでよかったね。結局こいつも多分に漏れず「成長できる主人公」だったんだなあ。俺はもうおじさんだから陰キャから一生脱出できないし性格もクソ悪いままなんだろうと思うと別の悲しさで涙が出てきた。

 

まあ、通り魔である必然性がなかったりあまりのラブコメ主人公ぶりに呆れたりしたけど割とセンシティブなので泣いちゃいました。久々に映画見たけど、もっとたくさん映画見たほうがいいなあなんて思ったしお金のある限り実行していきたい。